やまとや・お花




 この作品は安永〜寛政期(1772〜1800)頃に活躍した歌舞伎役者、4代 目岩井半四郎の舞台姿。歌舞伎誕生の初期には女性も演じたが、寛永6年 (1629年)には禁止されて、男優が女も演じるようになった。女形の登場 である。4代目岩井半四郎は、屋号を「大和や」といい、女形、若者、シリアスな男の役と多芸だった。ふっくらとした顔だちから「お多福半四郎」とあだ名される。

 この人形は「お花」という若い娘の役で、振り袖を着ている。袖には半四郎の定紋の「三つ扇」が付いている。明るい性格の江戸の女を演じて人気を博したが、半四郎自身も勝気でわがままな役者としても有名だった。また、彼の舞台衣装やオリジナルの「岩井櫛」などは、江戸中の女を魅了してたちまち流行になった。歌舞伎役者はファッション・リーダーでもあったのである