時そば
(ときそば)

   

穀物としてのそばは、ずいぶん古くからあったが、現代のように粉をこねて細く切って食べるようになったのは、江戸時代の初期。

やがて「そば切り」といって、庶民に普及していき、江戸にあっては担いで売りにくる夜そば売りは、「夜鷹そば」と呼ばれ、貧しい夜の女たちに一時の温かさを与えもした。だがこれは衛生面では不評で、これをこぎれいにして受けたのが「風鈴そば」。器や箸きれいに洗い、夜間なので売り声なく風鈴の音でそれとわかる。

そばの値段は幕末まで、かけそばは十六文と決まっていたが、それをネタにしたのが、おなじみの落語「時そば」である。客はしきりとそば売りをほめちぎるが、最後は「おい親父、今なんどきだ?」「へい、九つで」・・・・とうまいこと少なく払う。それを見ていた男、後日同じ手を使うが、なんと、多くはらうことに・・・・。