浅草寺・茶汲み女
(せんそうじ・ちゃくみおんな)

   

「茶屋」といっても、定店、つまり建物のなかで営業している茶店は「大
茶屋」。よしず張りの、いわゆる「出茶屋」は、朝にでかけて行ってあけ
、暮れ方にはしまって帰ってしまう「小茶屋」。「掛け茶屋」などともいう。
「水茶屋」は後者で、神社・仏閣の境内に、許可を得て営業したのが始
まりといわれる。

 江戸には一町に3、4箇所は水茶屋があり、集客のために競って美しい
女を雇っていた。緑茶に麦湯、桜湯などの飲み物の料金は決まっていない
が、少なく払えば女のアイソもつい悪くなる。女が美しくアイソもよけれ
ば人気者となって、かの「笠森お仙」のように、浮世絵に描かれもし、店
も繁盛となる。

 浅草寺境内の水茶屋は、江戸で最古といわれる。この茶汲み女は幕末の
スタイルで、渋い鼠地に斜め格子の表着だが、わずかしか見えない中着の
はなやかさ。椿模様の前垂れに、都鳥の手拭いが、いかにも浅草川のほと
り、浅草寺の女にふさわしい。