歳暮の雪
せいぼのゆき

   

十二月、「師走」と書くのは、師匠も駆けずり回るほど忙しい月、という意味ではなく、本来、この「師」は僧侶のこと。お盆と同様に、年の暮れにも先祖のため、僧侶に経を唱えてもらうので、師、つまり僧侶が駆けずり回る、と言う意味である。 

師走はお歳暮の時期だが、江戸時代にもお歳暮は盛んに贈答されていた。武家は上司に、商人はお得意様に、また庶民はお世話になった方々に贈る。鴨や鶏、鮒や干魚、塩魚、中でも新巻鮭や数の子は、当時も贈答の品のトップにあり、これは年神様にお供えするお神酒の肴とするためといわれる。江戸時代には、じかに先様に届けるのが慣わしだった。

国貞による『東叡下歳暮の雪』をもとに作ったこの作品の女も、あいにくと雪の中歳暮を届けに、東叡山、つまり上野の山の裾に差し掛かった、というところか。