おはよう


   

朝顔は、江戸時代には爆発的にブームとなり、花も葉も改良種がおびただしいほど作りだされた。特に文化・文政期(180429年)と幕末には、奇葉珍花の変化朝顔などで熱狂的になったほどである。江戸で催される花合せに出品するために、大坂から駕籠に鉢をのせて東海道を下ったとか、鍋島の殿様は、花合せ(花のコンテスト)で優勝した朝顔の鉢を、7両2分(約60万円)で買ったとか、その手の話には事欠かない。


 朝顔といえばラッパ型・・・というのが、現代の私たちのイメージだが、江戸時代の変形タイプというのは、花弁がわかれて捩じれていたり、花弁がヒョローっと長く垂れ下がったものなどなど、想像を絶するような形がたくさん絵に残っている。


 そのような高価な珍品ではなく、ごく普通の物は長屋の裏庭にも、種がこぼれれば井戸の釣瓶にさえ花開く。そんなささやかな朝顔の鉢を、いとおしく見つめる女ふたり。ひとりは歯みがきの最中で、房楊枝をくわえたまま。「ごらんよ、咲いたね」「ああ、いっち、きれえだねえ(とってもきれい)」などど言ってるのだろう。廓の女たちの朝である。