雨上がり

雨が上がって、向こうをかすめるホトトギスを見上げる母娘。かすり縞の袷に、子持ち縞雲板文様の帯の母。娘は木賊色(とくさいろ )地に光琳梅の袷、その上に童子格子の被布をはおっている。梅雨寒もある季節、母が気づかって娘には被布(ひふ)を着せたのだろう。  卯の花の咲く季節を「卯月」と呼ぶが、この頃になると南から渡ってきたホトトギスが姿を見せる。江戸で真先に鳴きはじめるのが、小石川白山あたりで、“初音の里”とも呼ばれていた。 「ぬしはいま駒形あたりほととぎす」の句を残したのは、吉原の名妓・紺屋の二代目高尾で、伊達綱宗侯にあてた手紙にしたためられていた。歌川広重はこの句にヒントを得て『江戸名所百景』に、ホトトギスの飛ぶ「駒形堂吾嬬橋」を描いたともいわれている。 また御茶の水、高田馬場、雑司ケ谷、谷中、増上寺の境内などがホトトギスの名所として有名だった。